さて
いよいよ最終章です
これまでのお話はこちらから
ここで
みなさんに
本当のことをちょっとだけ話そう
僕は某大手探偵事務所で働いてはいたが
この事務所の本業は「不動産業」だ
かっこよく言えば
探偵は
【裏稼業】
実は、僕は
探偵事務所ではなく
不動産業の会社に雇われていたのだ
監禁された僕は
「こんなところで殺されてたまるか」と
なんとか脱出するために
敵を欺くことにした
先にも書いたが
人を欺くには【鉄則】がある
それは
嘘はついてない
しかし
本当のことも言ってない
この状況を
いかに作り出せるか、だ
僕は重い口を開いた
自分は
ただの不動産屋だということ
今回のことは
社長に言われて手伝っていただけ
だから
自分には何が何だかさっぱり分からない
と
案の定
チンピラ達は
僕の勤め先である不動産屋を調べ始めた
すぐに
その会社が実在することがわかり
「こいつは本当に探偵じゃないのかも?」
と、疑い始めた輩も出てきた
実在する会社を名乗る
これだけでも相当なリスクだったが
殺されないためにはある程度は仕方がない…
さて
あとはどうやってここから脱出するか…
と
こ
ろ
が
である
しばらく姿を消していた親玉が戻ってきて
開口ひと言で、事態は急変した
「おい
裏は取れたぞ
お前やっぱり探偵だな!!」
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや
ありえない!!!
いくらなんでも
こんな短時間でバレるなんてありえない!!
本当に裏が取れたんだとしたら
赤坂の社長がゲロったとしか思えない!!!!!!
あんのクソ野郎!!!←
親玉「でもお前、もう帰っていいぞ」
へ?( ゚д゚)ポカーン…
親玉「何も聞くな。何も喋るな。二度とこんなことするんじゃねぇぞ」
「おい、お前ら、聞いただろ。帰してやれ!!!!!!!!!!」
チンピラ「へ、へい親分!!!!!!!」
こうして僕は
何が何だかわからないうちに解放された
ここからは後日談
あの時
赤坂の社長も他のチンピラ達に拉致られていて
そこでゲロったのは事実だった
しかし
赤坂の社長は
以前、ここいらを縄張りとする某暴力団の組長から
探偵の仕事を依頼されたことがあったそうで
まさかまさかの
組長と知り合いだったそうだ
「このままでは自分も、彼(源)も命が危ない」
と判断した赤坂の社長は
「組長と知り合い」という印籠を振りかざしたのだ
さすがに
「組長の知り合い」に粗相をするわけにもいかず
僕も赤坂の社長も解放された、というわけだ
めでたしめでたし
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!!
ちょっと待て!
まだだ!
まだ解決してない謎があるだろ!!!
どうして
調査初日から
調査していることがバレていたのか???
そこだけは
絶対僕の失敗ではない!!!!
と、言い切れる!!!!!
これも後日談
実は今回の依頼者
これまでにも同じ調査を
いろんな探偵社に依頼をしてきたそうだ
その中のどこぞの探偵が
バレるようなしょぼい仕事をしたのだろう
探偵に仕事を依頼する際
一つでも嘘をついてはいけない
その一つの嘘が
調査そのものをぶっ壊し兼ねないからである
今回、この依頼者は
「探偵にお願いするのは初めてです」という
最もついてはいけない嘘をついた
今回の調査の失敗で
依頼者が誰なのか、その一点だけは
赤坂の社長も最後まで話さなかったらしい
大げさかもしれないが
そこは
探偵として
命をかけても守らなければならない秘密だ
その後
依頼者がどうなったのか
No.1の座に君臨できたのか
調査がバレて消されたのか
誰も知る由もなかった
最後に
なぜ僕が
この事件をきっかけに
探偵を辞めようと思ったかというと
もちろん
こんな怖い目に会うのは二度とごめんだ!
という思いもあったのだが
この事件で命の危険を感じて
一番歯がゆく思ったことは
自分の生死が
自分の判断以外で
左右される可能性
もし
あの時
赤坂の社長が
組長と知り合いじゃなかったら?
あの時
僕はどうなっていただろうか?
大げさでもなく
東京湾に沈められて
魚の餌にされていたかもしれない
みなさんは
日本で一年間に
一体どれぐらいの人間が行方不明になっているか
ご存知だろうか
届け出があるだけでも8万人
届け出がないものを含めると
10万人もの人間が
行方不明になっているとも言われている
そのうち
僕という人間がひとり追加されたところで
世の中には大して影響は無い
それぐらい
人は消えているのだ
そう考えると
せめて
自分の生死ぐらい
自分の意思で決めたいものだ
この仕事を続けていたら
自分の意思とは関係ないところで
いつか誰かに殺されるかもしれない
冗談じゃない!!!!!!!
多くは望まない
せめて
命を狙われない生き方をしよう
それが
僕が探偵を辞めた理由だ
探偵という仕事は
刺激的で
非日常的で
「面白い」側面は多々ある
これから探偵を始めたいと思っている人は
「命」だけは
落とさないように
気をつけてほしい